きらきらひかれ

二大担当制

ジョーダンバットが鳴っている

 

 

 

それぞれの家庭にそれぞれの教育方針みたいなものがあるんだろうけど、我が家の場合は「とにかく本を読め」だった。

 

小学校に入ってすぐ(記憶が曖昧なのでもしかするとすぐではないかもしれないけど)の頃から母親に「本を読むと文字や言葉をたくさん覚えられるから」と言われて毎月『ちゃお』を買ってもらっていた。父は「なんで漫画なんだよ」と言っていたけれど(今考えると確かにそう思う)、母は「漫画でもなんでも文字さえ読めりゃいいのよ」と言ってちゃおの定期購読をわたしが小学校を卒業するまで続けてくれた。オモチャやゲームはクリスマスにしか買ってもらえなかったけど、本だけは欲しいと言えば大体は買ってもらえた。青い鳥文庫の本とか、漫画の単行本とか。話が逸れるけれど、わたしの家では誕生日プレゼントを貰える年と貰えない年があって、その理由については「むしろここまで大きくなれましたってお父さんとお母さんに感謝しなさいよ」と言われたのだけど、(貰える年はおそらく両親の気まぐれで、「誕生日だから〇〇がほしい」とリクエストすると買ってもらえる時もあった)最後に自分のリクエストで貰った誕生日プレゼントは確か小学4年生の時、小学館の動物図鑑だった。いま思うと図鑑だって本なんだから、わざわざ誕生日に買ってもらわなくてもいいのになぁ。

 

中学に入ってからも相変わらず漫画が好きだったけど、小学生の頃みたいには買ってもらえなくなった。元々"アンチ漫画"だった父が許してくれなくなったからだ。それからは親がお金を出してくれる本は、漫画以外の本になった。

そんなルールみたいなものが出来てから、買ってもらうのはもっぱら小説の文庫本になり、その内の一冊が伊坂幸太郎の『オーデュボンの祈り』だった。当時「面白い小説家」を全く知らなかったわたしは「伊坂幸太郎は面白い」と覚えて、伊坂幸太郎の本を読むようになった。今思えば、もしあの時伊坂幸太郎の小説に出会っていなかったら、今みたいに読書が好きな人間になってなかったかもしれない。

 

そのくらいに、わたしの『伊坂幸太郎』の思い出は深い。

 

 

 

 

大学1年の春休み、気になるアイドルが出来た。戸塚祥太というひとだった。このひとの名前をネットで調べていくうちに『伊坂幸太郎』というワードを見つけた。どうやら戸塚祥太くんは伊坂幸太郎が好きらしい。趣味合うじゃん、と思った。しかもあの『ダ・ヴィンチ』で連載しているとか。マジかよ、文が書けるジャニーズって加藤シゲアキだけじゃなかったのかよ、と思った。

 

 

 

わたしがダヴィンチを初めて読んだのは高校1年の時だ。高校の図書室にいた司書さんがとても面白い方で、わたしはしょっちゅう図書室に通っていたのだけれど、そこでほとんど毎月読んでいた。戸塚くんがダヴィンチで連載を始めたのが2013年11月だけど、その頃受験生だったわたしは、高3の春に大好きだった司書さんが転任してしまったこともあって図書室にあまり行かなくなっていたから知らなかったのかもなあ、と思った。

 

 

 

戸塚くんがダヴィンチで連載していると知って、大学の図書館で久しぶりにダヴィンチを開いた。ページをめくっていくと、雑誌の後ろのほうにあった。戸塚くんの連載、『ジョーダンバットが鳴っている』。ジョーダンバット、ってどっかで聞いたことあるぞと思った。ちなみにわたしはわりと本を読んできたほうだと思うけれど、読み終えて本を閉じた瞬間には6割内容を忘れてるような人間です。

例に漏れず、その時読んだのがどの回のジョーダンバットだったのかは覚えていないのだけど、「このひとの書く文章、読みやすいなぁ」と感じたのははっきりと覚えている。あと"予想してたよりもものすごくちゃんとした"エッセイに驚いた覚えもある。戸塚祥太、すげえと思った。

 

 

 

それからまあ色々あって戸塚くんを『自担』にするんだけど、担当になってから分かったのは、戸塚くんはわたしが予想してた以上に"書く"ことが好き、ということだった。そしてわたしは戸塚くんの書く文章を読めば読むほど、戸塚くんのことを好きになった。戸塚くんは気持ちのいい文を書く。そしてその文はすっと心に馴染む。『ジョーダンバット~』の連載がダヴィンチで終わってからは戸塚くんが書いた文章を読めるのがジャニーズwebだけになってしまって、寂しかった。

 

 

ジョーダンバット~』の連載が終わってからしばらくして、戸塚くんが本を出せたらなあとぼんやり考えた。ツイッターでもたくさんのひとたちが『ジョーダンバット~』の書籍化を願っていて、編集部にメールや手紙を送っているひともいた。わたしもメールを送った覚えがある。メールになんて書いたかはっきり覚えていないけれど、その時は自分に何ができるか分からなくて、藁にも縋る思いで、と言うと大袈裟だけどとにかくそんなような気持ちだった。

 

 

書籍化の知らせを初めて聞いた瞬間、「こんなことってあるんだ」と思った。わたしはジャニオタになってから要望メールや手紙を書くことをするようになったのだけど、それまではそういうものを書こうと思ったことなど一度もなかった。これについては自分の性格も関係しているんだろうけど、わたしは元々「実現するかも分かんないことに時間使うの無駄じゃん」って思ってしまうタイプの人間だからだ。

 

だけどそんな自分の性格が(好きなアイドルに関することだけだけど)変わるくらいの強い思いを持つことが、オタクになってから何度かあった。「実現してもしなくてもとりあえず書くだけ書いてみよう」という選択肢がわたしの中に出来た。

 

そんなふうに「とりあえず」で書いてみた要望メールが、まさか実現するとは。わたし以上に沢山メールを送った方もたくさんいたんだろうし、今回はそういう方々の熱量の成果であって、わたしなんか1ミリグラムも貢献できたかは分からないけれど。

 

 

戸塚くんは「みんなのおかげで」と言い続けていた。「みんなのおかげで本になる」と。実際に出版された本のまえがきにもそういうふうな旨の文がある。だけどみんながそういう行動を起こした大元のエネルギー源は、間違いなく戸塚くん、あなた自身だよ。これはわたしなんかが言っていい言葉じゃないのかもしれないけど。でも、戸塚くんにはそういうパワーがあるんだよ。戸塚くん、あなたはとてもすごいひとです。『ジョーダンバットが鳴っている』の作者は、戸塚祥太ただひとりだよ。わたしはとても誇らしいです。戸塚くんのファンでいることが、陳腐なことばだけどほんとうに幸せです。楽しいです。

 

 

 

フォトエッセイ『ジョーダンバットが鳴っている』は、戸塚くんがダ・ヴィンチで連載していた際の『ジョーダンバットが鳴っている』とその他ダ・ヴィンチに寄せた本の紹介文等に加え、新たに4人のメンバーのインタビューと戸塚くんが書き下ろした短編小説が収録されている。

 

連載していた分の『ジョーダンバット~』では毎回違った出来事について、その時の戸塚くんの思いが綴られている。わたしは大学の図書館でダ・ヴィンチのバックナンバーを読んでいたので、全て1度は読んだことがあるはずなのだけど、やっぱり忘れてしまっている部分が大半で、新鮮な気持ちで、ところどころ「ああこんなこと書いてたなぁ」と思いながらページをめくった。いくつか声を出して笑ってしまった箇所もあったりして、戸塚くんてやっぱり面白いひとだなと改めて思った。連載していた分の『ジョーダンバット~』をすっかり読み終えると、戸塚くんを中心で支える一本の柱がうっすらと見えた気がした。多分、戸塚くんが戸塚祥太である所以の柱だ。それはまだはっきりとは見えないけれど、でもこれを読めば間違いなく見える。誰かのファンをやっていると迷うことが何度もあるけど、そういう時がこれから来たらわたしは、間違いなくこの本を開くと思う。

 

 

メンバーのインタビューを読んで感じたのは、「A.B.C-Zってみんな優しいんだな」ということだった。これはもう知っていたことだけど。優しさゆえに傷つけまいとしてすれ違ったこともあったんだろうけど、それに気づいたらもう大丈夫。A.B.C-Zは最強だもんね。

 

 

読んでいていちばん楽しかったのが最後の書きおろし短編小説『光』だった。鈍感というかアホだから3回読んでやっと、なんでそのタイトルが付けられたのかが分かった。自分以外の人間から見られる(この小説のなかで言えば「見ることができる」なのかもしれない)部分はどうしたって光が当たっている部分でしかない。だけど自分自身にとっては光が当たっていない=暗の部分のほうが重要だったりすることもあるし、その分しんどかったりもする。むしろ明の中でどう動けるかは、暗の中にいた時にどういうふうにふるまっていたかが関係しているのかもしれない。暗は他人から見られない分サボることもできるけど、だからこそその部分は自分だけのものだ...と、わたしにしては珍しく考察してみたりもした。つかこうへいと伊坂幸太郎の両方を知っているひとにこの小説を読ませて、「この小説の作者、つかこうへいと伊坂幸太郎が好きなんですよ」と言ったら5人中4人は「やっぱりね」と言いそうだと思った。そのくらい強く、このふたりの作家が戸塚くんに影響を与えているんだと思うと、なんだか胸がほかほかとした。戸塚くんの『小説』をちゃんと読んだのは今回が初めてだと思うけど、純粋にもっと読みたいと思った。戸塚くんが「書く」ことを続ける限り、わたしはその読者であり続けたい。どうか戸塚くんに書き続けてほしいと、強く願わずにいられない。

 

 

 

 

ジョーダンバットが鳴っている』の出版、ほんとうにおめでとうございます。3年前、Googleの検索フォームに戸塚祥太と入れていた自分に「そのひと、3年経ったら本出すよ」って教えたらどんな顔するんだろう?きっと驚くだろうな。