きらきらひかれ

ジャニオタのブログです。→ほぼ茶の間。

デイゼロ、のその日

 

(※若干舞台についてのネタバレを含むかもしれません)

 

 

 

 

 

 

 

 

前日の19時くらいまで、ほんとにほんとに水戸に行くつもりはなかったんだ。まあ今となってはただの言い訳みたいになってしまうけど。

 

 

前日20時くらいになって「あ、そういや明日初日じゃん」と思い出した。21時くらいになって「…水戸なら、行けなくもないな」と思い始めて、22時には譲りのチケットを探していた。おたく、フットワークの軽さだけが取り柄です。幸い、とても良い方に譲ってもらえることになって、話がちゃんとまとまったのが、もう日付越えてだいぶ経った時間だったかなぁ。譲って頂いたのがめちゃくちゃ丁寧にやり取りしてくださる方で(本当に感謝しかない)、それだけでもうこの舞台が良いものになるんじゃないかって、なんとなく予感めいたものがした。

 

 

 

当日、お昼の12時に研究室を抜け出して(つくづくダメな院生だ)、普通電車を乗り継いで水戸に向かった。朝大学に寄ってJRの学割証ちゃんともらってきてたあたり、ちゃっかりしてるなあ自分、と思う。

 

水戸に向かうまでなんにも手に付かなくて、カバンに入れてた文庫本を開いたりもしてみたけど、全く内容が頭に入ってこなかった。3ページ読んだくらいで諦めて、またカバンにしまい直した。

 

 

 

 

日暮里で乗り換えて常磐線の電車に揺られていたら、ふと気づくと斜向かいにおじいさんが座っていた。そのおじいさんが、持ってたレジ袋からレモンのストロング缶酎ハイを取り出して、美味しそうに飲んでたのが羨ましかった。電車はとても空いていた。ゆっくりゆっくりロングの缶酎ハイを飲み終えたあと、もうひとつ持っていたレジ袋から何かを取り出したなと思ったら、それが薬の処方箋だったから、心の中で「おいおいおじいちゃん大丈夫?」って話しかけたりした。おじいちゃんはつまんなそうに処方箋を眺めたあと、またレジ袋にしまい直して、確か赤塚で降りて行った。

 

 

 

水戸駅で降りるのは二度目だった。2年前の3月、茨城大に進学した高校時代の友達の家に遊びに来た時以来。一度目に来たときはたしか花言葉(※A.B.C-Zの8枚目のDVD。名曲です)が発売された直後で、友達にわざわざ「見たいCDがあるんだけど」ってお願いして2〜3軒CDショップを回って、各店舗でどういうふうなコーナーが作られてるかをただ見て回った。その友達には最初、A.B.C-Zが好きとは伝えてなかったんだけど、さすがに2軒目のお店で「なんのCD買いたいの?」と聞かれたから「実はいまA.B.C-Zが好きでね、新しく出たDVDがどういう感じか見たかっただけなんだ」と告白した。わたしはジャニーズの「ジャ」の字も言わないような女子高生をやってたから、その子は凄く驚いてた。まあこれはいま関係ない話なんですけどね。

 

 

 

でもさ、その時はまさか、当時Jr.(しかもアラサー)だった推しの初単独主演ミュージカルを観るためだけにまた水戸へやって来るなんて、思いもしないじゃあないですか。

 

 

 

ぼんやり覚えていた水戸駅の構内を歩いて、4番のバス乗り場からバスに乗り、劇場に向かった。スムーズにチケットを受け取ることが出来て、時間が余っていたからロビーでぼうっとしていた。これから自分がなにを観ようとしているのか、頭では分かっていたけど、心が追いついていなかった。

 

 

開場の時間になっても、なんだかすぐには劇場に入る気分になれなくて、ロビーの端っこで、さも「友達を待ってるんですよ」みたいな顔して突っ立っていた。ぞろぞろと劇場内に吸い込まれていくひとたちを横目で眺めながら、開演10分前になってようやく中に入って席に着いた。

 

 

初めて入った水戸芸術館の劇場はこぢんまりとして、でも内装が素敵だった。背もたれは低めでちょっと座りにくかった。ぐるりとまわりを見渡してようやく、「あ、ここの舞台が始まりになるんだ」という実感が湧いた。

 

 

 

開演予定の18時半を少し過ぎてから、始まったと思う。うす暗く照明が落とされたシンと静まった劇場で、気づいたらすぐ横に福ちゃんが立っていたからひどく驚いた。驚いて顔を見上げたけど、その横顔はもう、福ちゃんのものじゃなかった。

 

 

 

2016年に『コインロッカーベイビーズ』という音楽劇の舞台があった(A.B.C-Z 橋本くんと河合くんが主演だった)。とても大好きなオタクの友達(河合くんのおたくです)がいて、その子とこの舞台を観劇したんだけど、わたしが初めてこの舞台を観たその日、2回目の観劇だったという彼女は既に劇中歌やセリフをめちゃくちゃ暗記していた。劇中歌を歌いながら、ご飯を食べようと移動した渋谷のスクランブル交差点を渡ったりしていた。「すごいね」とわたしが言ったら「劇中はメモとか取ってないんだけど、覚えてるんだよね。多分この舞台がすごく好きなんだと思う」と答えが返ってきた。その時は「いや、それでもすごいって」と言い返したけど、今ならちょっと、あの子が言っていたことが分かるような気がしてしまう。

 

 

 

ジョージ(福田くん)やモリー(谷口さん)やディクソン(上口さん)やアーロン(内藤さん)やパトリシア(梅田さん)やカウンセラー(西川さん)、ほかにも登場人物はいるけれど、まだ一度きりしか観ていないのに、案外、自分でも驚くくらいに彼らの言葉を覚えている。歌も覚えている。わたしはすんなりと、この舞台の虜になった。始まって5分くらいで「これは好きですわ」と、なんとなく全面降伏させられたような気分になったのも覚えている。

 

 

 

劇が始まるまでは泣くのかなぁとか考えていたけど、お芝居が始まった途端にそんなことは忘れていた。「福田悠太さんの初主演ミュージカル」の感慨に浸る余裕なんてなかった。このお話に、ただただ飲み込まれるしかなかった。

 

 

 

 

偶然だけどわたしは今年に入ってから、このデイゼロの前にも戦争を扱ったミュージカル(『マタ・ハリ』)を観劇していた。その時にも頭に浮かんできたのは「戦争ってなんなんだろう」という漠然としすぎている疑問だった。死にたくない、生きたい、大切な人とともに生きたい。でもじゃあ、その大切な人を守るには?自分が戦うしかないんじゃないか?死にたくないけど、戦地へ行く。誰かを守るために、誰かを殺す。それが「しょうがない」で済まされてしまうのが戦争なのだ、たぶん。

 

 

 

舞台、特にミュージカルは、「面白い or 面白くない」と同じく「合う or 合わない」があると思っているんだけど、わたしはこのデイゼロの世界がとても好きだし、きっと自分に合っていると勝手に思い込んでいる。最後のシーン、作り込まれたラストへの盛り上がりとかそういうのじゃなくて、何かが「プツン」と切れたような感じ。人が死というものと本気で向かい合わなければいけなくなったとき、ああなるのかもしれない。お話が閉じたときその一瞬、透明な時間が流れた気がした。「え、これで終わりなのか」と思った次にはもう、キャストの皆さんが深々とお辞儀をしていた。拍手に包まれながら、顔を上げたその表情はたぶんいつもの福ちゃんに戻っていた。

  

 

 

 

何度かここにも書いている気がするけど、わたしが初めて福ちゃんを知ったのは2015→2016のカウコンだった。東京ドームにいたわけでもなく、テレビの中継で見ていた。タキツバのバックでVenusを踊っているふぉ〜ゆ〜を、福ちゃんを見てから、なんとなく頭からずっと離れてくれなかった。それからリア恋やら(ここは笑うところです)いくつかのふぉ〜ゆ〜主演舞台を経て、去年の冬、半ば強引に認めさせられたような感じで(完全に主観なんだけど、でも福ちゃんに関してはそういう感覚だった)福田悠太さんの担当を名乗るようになったのだけど、そのときはまさか、こんな日が来ると思ってなかった。

 

辰巳くんの主演舞台が決まったと聞いたときは、「ああそうか」と思った。ふぉ〜ゆ〜で先陣切るなら辰巳雄大でしょう。大いに納得です。だけど福ちゃんの主演舞台が次に来るとは思ってなかった。しかもミュージカル。わたしは福ちゃんの歌が好きだから、大丈夫でしょうって勝手に思っていたけど、たぶん福ちゃんは自分で「歌は得意じゃない」って思ってるんだろうなとなんとなく感づいていた(実際にそのようなことを雑誌でも言っていた)。

 

 

担当になってから知ったんだけど、福ちゃんは恐ろしく自己肯定力が低い。謙遜とかじゃなく本気で本気で自分のことを「ダメなやつ」みたいに言う。努力を見せるのも嫌いなんだと思う。照れ屋でもある。中学生のときとか、中間テストの前に「勉強した?」って聞いても「全然してねー」って言ったくせにフツーに平均点以上取ってなんでもないような顔してるやついたじゃないですか。福ちゃんああいうタイプだと思ってます(ちなみにここでの例えは、福田くんの学力偏差値が高いかどうかとは別問題です)。なんだよもう、あなた何歳なんだよ。今年32になるんでしょう。もういい加減、自分が恐ろしく綺麗で、ダンスも上手で、演技も出来て、自信ないって言ってた歌も超実力派キャストの方々と「まあ張り合えるんじゃね?」くらいのレベルまで努力で歌えるようになってしまえる福田悠太さんだっていうことを認めたほうが良い。認めて、楽になってしまえよ。福ちゃんは格好良すぎるよ。福ちゃんを格好良いって認めてないの、福ちゃんくらいだよ。

 

 

 

 

 

 

ミュージカル『DAY ZERO』はまだ始まったばかりだ。これからもっともっと福ちゃんの演技と歌と、もろもろ含めた「役者 福田悠太」が成長してしまうって考えると、楽しみでも、ちょっぴり恐ろしくもある。

 

 

 

 

 

キャストの皆様が最後のその日まで全力で走り抜けられるよう、祈りを込めて。